イマドキのコピー機はOCR機能付?
そもそもOCRとは?どういう使い道がある?
コピー機は、紙の資料をコピー・FAX・スキャンするために用いるケースが大半です。そのため、オフィスワークの中ではどうしても機能に限界が生じてしまうことがあります。
例えば、家具などのオーダーメイド品を作る場合、文字情報だけでなく図説等も合わせて1枚の紙にまとめることは珍しくありません。
履歴書も、顔写真とプロフィールが1枚にまとまっていますから、データとして管理する場合は別途入力作業が必要です。
こういった作業をデータ化するには、資料の数が多ければ多いほどマンパワーを必要としますから、会社としても相応の人員を確保しなければなりません。
しかし、OCRを導入・搭載することで、コピー機を介したデータ処理を大幅に効率化することができます。
この記事では、OCR機能の概要や使い道・コピー機への標準搭載の有無などについてご紹介します。
OCRとはどのような機能か
コピー機でスキャンしたデータは、多くのオフィスにおいて「画像データ」として保存するのが一般的です。しかし、画像データとしてだけでなく、元データを集計・改変したい場合は、すでに保存したデータの中から必要な情報を抜き取らなければなりません。
OCRの登場以前は、データ入力の担当者を別途採用・配置しなければならず、その分コストが発生していました。しかし、オフィスユースのOCR導入により、それらの問題を解決できる可能性があります。
以下に、OCRの機能概要についてご紹介します。
画像データの中にある「文字」を抽出・データ化する機能
OCRとは「Optical Character Reader(Recognition)」の略で、スキャンなどで得た画像データの「テキスト」部分について抽出し、データ化する機能のことです。
日本語では「光学文字認識」という意味合いになり、もともとは海外で生まれた技術でしたが、日本でも郵便番号の自動読み取りができる製品などが開発・販売されています。
コピー機を介して読み込まれた紙ベースのデータは、人間にとっては書類として理解できるものでも、機械の側では基本的に自動で読み込むことはできません。
つまり、画像データの中から文字だけを読み取るためには専用の機能が必要になり、人間と機械との間で翻訳を行ってくれるのがOCRにあたります。
OCRで文字データだけを読み取るには一定の手順があり、画像を取り込んだ後はデータの中から文字として読み取る部分だけを確認します。
その後、特徴を踏まえて文字列→文字という単位で順に文字を割り出し、最終的に文字データに変換・抽出されるという流れです。
数多くの文字・記号が文字データ化できる
OCR機能を用いることで、画像データから手打ちでテキストデータ等に変換しなければならなかった文字や記号は、自動的にデータ化できるようになります。
ただ、文字認識の方法は複数存在しており、現代ではAIのディープラーニング技術を用いたOCRも登場し、認識のレベルは日々向上しています。
OCRの性能にもよりますが、データ化できる文字・記号等をあげると、概ね以下のようなものがあげられます。
- ひらがな/カタカナ
- 漢字
- 数字
- アルファベット
- 一部の記号
- ○で囲んだ文字(①、②etc.)
読み取る際は、フォントの方が読まれやすいとされていますが、高性能なものであれば手書き文字も認識できます。
こういった幅広い文字認識能力から、OCR機能はテストの採点・システムの点検・注文書や請求書などビジネスデータの読み込み・勤怠表の取り込みといった様々な用途に用いられています。
標準搭載されているメーカーもある
もともと、OCR機能は専用スキャナとして開発・運用された経緯があり、日本で古くからOCRスキャナを製造・販売していた東芝の「モデル12000」は、毎分330枚の高速OCR読み取りを実現しています。
オフィスユースにおけるコピー機のOCR機能は、ここまで多量の読み込みは想定されておらず、多くの場合はオプション機能として用意されています。
しかし、OCR機能が標準搭載されているメーカーもあり、シャープのMX-2661を例にとると、本体にOCRエンジンが内蔵されています。
OCR機能によって変換されたテキストデータは、PDFのほかWord・Excel・PowerPointデータとして保存でき、標準装備としては必要十分な性能と言えます。
OCR機能を導入すると、どんなメリットがあるのか
OCR機能がどのような機能なのか確認したところで、次にOCR導入により得られるメリットについてご紹介します。
一言でまとめると、アナログな作業がデジタル・一括で終了するので、その分人的リソースの節約・データ管理時の利便性向上につながります。
人力でデータを入力する手間が省ける
紙ベースでデータ管理をしている場合、パソコンを介するデータの入力は、多くの場合手打ちになります。
たくさんのデータを正確に手早く入力したいなら、その分だけ人員の量・質が求められるため、経営者にとってはコストが馬鹿になりません。
また、どんなに能力の高い人材であっても、人間である以上、絶対にミスは避けられませんから、ダブルチェック要員も確保しなければなりません。
マンパワーにノーミスを期待するのは難しい一面があり、高度な作業の再現性を持つ人材は、そのスキルゆえに雇い続けるにも限界があります。
その点、OCRを導入すれば、スキャンすると同時に文字データが各種形式で保存できるため、入力作業にかける時間が大幅に短縮できます。
単純作業を人手に頼っている企業にとって、導入のメリットは大きいでしょう。
保存データが探しやすくなり、容量の節約もできる
スキャンをよく使用する人は、スキャンデータの保存したばかりの時点で表示される「img-226113355」などの無機質なデータ名を、いちいち自分が分かりやすいように書き換えた経験があると思います。
また、画像での保存となるスキャンデータは、書類の詳細は一度中身を見てみないと分からないことが多く、検索時はファイル名が分からなければ見つからないリスクもあります。
OCRを用いることでテキストデータが手に入ると、キーワードを使ってデータを検索できるようになるため、文章検索が用意になります。
また、テキストデータで文章を保存した場合、画像データとして保存する場合に比べて大幅に小さなデータ容量でまとめることができますから、保管容量の節約にもつながります。
データ形式を指定できる
先にシャープ機のOCR機能を説明した件でもお伝えしましたが、コピー機のOCR機能はオフィスユースを想定しているため、画像データを複数の形式で保存できます。
具体的には、文書として引用する部分があるならWordデータに、数値を表計算としてまとめたいならExcelデータに、プレゼン資料に作り変える必要があるならPowerPointデータに変換できます。
一から紙ベースの書類を修正してデータ化するのは、意外と面倒な作業です。
段落を変更したり、図説やグラフの数値を最新のものに書き換えたりする場合、場合によっては単純なコピペだけでは済まないケースも珍しくありません。
OCRを使えば、段落のずれが自動で修正されたり、画像の位置が自由に変更できたりするので、人の目でチェック・修正すべき部分が少なくなりますから、結果的に作業工数を減らせます。
少数精鋭の職場・マルチタスクが求められる職場では、特におすすめできる機能と言えるでしょう。
具体的な導入例について
実際にOCRを導入している企業は、どのようなニーズから導入を決定したのでしょうか。以下に、具体的な導入事例について、いくつか特筆すべきものをご紹介します。
紙ベースの経理・会計資料の伝票入力
オフィスワークの中でも、毎日・毎月・毎年という一定のスパンで締めに追われている職種の一つに「経理職」があげられます。
デジタルデータで主なやり取りを行う企業も少なくありませんが、経理・会計資料を紙ベースで管理している企業は、伝票入力や請求書等の管理を人力に頼らざるを得ません。
このような状況下で、少しでもタイトなスケジュールの影響を緩和しようと、OCRを導入する企業が見られます。
資料によっては入力作業が大幅に効率化されるため、人的コスト・作業時間の削減・ミスゼロの実現が期待できます。
図と文字が一緒になった資料からの情報抽出
ビジネスシーンでやり取りされる資料は、文字・数字だけで構成されているものばかりではありません。
図説・グラフ・パンフレットなど、画像と文字データが混在しているものを改めてパソコンに入力しなければならない場合、目視によってデータを仕分けていかなければならないケースもあります。
OCRを利用すれば、この作業をスキャンだけで完了させることができます。
例えば、顧客のボディサイズを採寸したデータを部位ごとに図としてまとめた資料があるなら、それを読み込むだけで文字・数字だけを別途取り込めます。
人員不足の中での作業効率化
病院や治療院など、顧客の多様性からどうしても手書きの申込書を使わざるを得ない業種だと、なかなか入力作業のオートメーション化は難しいかもしれません。
しかし、人間が書いた文字を読み取れるような高度なOCRも存在しているため、導入できれば情報整理がはかどり、人員が限られる小規模施設でも作業効率化が期待できます。
導入・運用の過程で、機械がより読み込みやすい書類形式へとブラッシュアップすれば、その分読み込みの精度も高まります。
時間が余れば、その分だけ別の課題にリソースを振り分けられますから、結果的にサービス向上につながるでしょう。
この記事のまとめ
OCR機能を導入・運用できれば、今まで人の手に頼っていた事務作業を、よりスピーディーに処理できるようになるでしょう。
AIの性能が向上するにつれて、応用できる範囲はどんどん広がっていくことが予想されます。
OCRは、パソコンを用いて行う作業を自動化するRPA(Robotic Process Automation)と相性が良く、うまく運用できればデータ入力作業のほとんどを自動で進められる可能性があります。
コスト削減と効率的なリソース配分を検討するなら、コピー機にOCR機能を求めるのは、もはや現代において必然と言えるのかもしれません。