オフィス向けコピー機で裏紙はダメ?
裏紙を使うリスクやデメリットを知っておこう
オフィスワークにおいて極力なくしたいものの一つに「印刷ミス」があります。
誤印刷によって生まれた無駄紙は、多くのオフィスで再利用するため「裏紙」として利用されますが、実はこのような使い方はコピー機の寿命を縮めてしまいます。
そもそも、コピー機で裏紙を使った印刷をすることは、メーカー側で推奨されていません。
一度印刷してしまったコピー用紙にはインクがついているので、そのような紙を機械に通すと、不具合が起こるおそれがあります。
どうしても裏紙を使いたい場合、あらゆる用紙をコピー機に通してしまわないよう、注意すべきこともいくつかあります。
この記事では、オフィス向けコピー機で裏紙を使うリスクや、デメリットについてご紹介します。
一見メリットが多いと思われている裏紙印刷だが……
経費節約の方法の一つとして、一見するとメリットが多いと思われている裏紙印刷ですが、実際のところそこまで劇的なメリットがあるわけではありません。
印刷する回数自体は裏紙を使う時点で無駄に1回増えているわけですから、紙を1枚節約できたとしても、結局印刷コストはかかっているのです。
裏紙を選ぶメリットはごくわずか
率直に裏紙印刷のメリットを伝えると、たった1点に集約されます。
それは「無駄遣いしてしまった紙にもう一度印刷できる」という点です。
裏紙を使えば、確かにコピー用紙1枚は節約できるでしょう。
しかし、身もふたもない言い方をしてしまえば、メリットはそれだけです。
むしろ、裏紙印刷を続けるうちに、デメリットの方が目立ってくるようになります。
やがて、そのデメリットの方が、後々ボディブローのようにコピー機を痛めつけていきます。
紙詰まりを起こすのは裏紙が多い
オフィスで用いられているコピー機は、レーザー機が多い傾向にあります。
レーザー機の転写の仕組みは、ドラムと呼ばれる感光体にレーザーを当てて印刷内容を描写し、そこに静電気を用いてトナー粒子を付着させるというものです。
この静電気がくせ者で、すでに印刷に使われた用紙は、印刷前の用紙に比べて静電気が起こりやすい傾向にあります。
すると、2枚もしくは3枚といった用紙が、印刷時に同時に引き込まれ、多くのオフィスワーカーを悩ませる紙詰まりを起こしてしまうのです。
現場にいる社員の方で紙詰まりを何とかできればよいのですが、深い場所に詰まってしまうと、トラブルシューティング通りに除去できない可能性もあります。
結果的に、サービスマンが来てくれるまで印刷ができなくなるおそれがあるため、裏紙を頻繁に利用するのは避けたいところです。
コピー機が汚れやすくなる
裏紙を使った印刷をすると、本来ならトナー・インクがつかない場所に、汚れがついてしまう可能性があります。
トナーを定着させるためには熱が必要になりますが、トナーの定着温度は機種により異なるため、例えば別のコピー機からの誤印刷で発生した裏紙に印刷をかけると、その後の印刷物が汚れてしまったり、印字不良となったりするおそれがあるのです。
一部機種には、同じ機種でコピーした裏紙に限り「裏紙対応」としているところもありますが、基本的にはどのメーカーも推奨していません。
結局、コピー機が汚れてしまうと、新たに裏紙を作ることになりますから、やはり裏紙印刷のメリットはわずかなものだと言えるでしょう。
修理の頻度が増えてしまう
裏紙コピーを続けていくうちに、コピー機の内部は劣化が進んでいきます。
すると、次第に各パーツの性能が弱くなり、サービスマンによる修理の頻度が増えてしまうのです。
カウンター保守契約を結んでいれば、普段のメンテナンスや修理に別途費用は発生しません。
しかし、サービスマンが対応にあたっている時間、オフィスにいる社員の作業は止まってしまいます。
失った時間は戻らず、場合によってはそれが原因で社員の残業を招いてしまうかもしれません。
不毛な時間を増やさないためにも、コピー機のコンディションを保てる使い方を意識した方が賢明です。
裏紙を多用した場合に想定されるリスク
コピー機にダメージを与えてしまうだけでなく、裏紙を多用することには、他にも以下のようなリスクがあります。
直接コピー機に裏紙を入れて使用していなかったとしても、場合によっては深刻な問題に発展するおそれもあるため、使用する際には十分注意が必要です。
情報漏洩リスク
誰にとっても分かりやすく、発覚した際の損害が大きいリスクとしては、情報漏洩リスクがあります。
特に、個人情報を紙ベースで管理する習慣がある会社にとっては、裏紙の使用は慎重に行わなければなりません。
仮に、裏紙トレイに特定の個人を識別するのに十分な情報が載っている裏紙があって、それを社内資料の印刷限定で印刷した場合を想定してみましょう。
一見すると、社内だけで使用しているので問題はなさそうですが、仮にその個人情報に強い興味を示す人物が、たまたま目を通してしまったらどうなるでしょうか。
例えば、打ち合わせ中に社員が席を外して、その社員がいない間に、取引先の人物がたまたま社員が持っていた裏紙の個人情報に気付いてチェックし、後々その人物にストーカー行為を働いていたら、重大な事件に発展するリスクがあります。
万一、新聞に載る大事件となり、その一因が「自社のずさんな個人情報管理にある」とすっぱ抜かれたら、一気に信用を失ってしまうでしょう。
そこまで深刻なものでなくても、他社の目に触れてはいけない書類が、なぜか紛れ込んでしまうケースは十分考えられます。
裏紙の管理については、社員全員に使用できる範囲や場所を徹底させなければなりません。
資料混同リスク
裏紙として使っていた用紙が、実は重要な資料だったというケースも、リスク要因として考えられます。
特に、時間を空けて複数の印刷を行った場合・複数人が同時に印刷をかけた場合などは、一部の用紙がどこかに紛れ込んだままになってしまい、印刷した当人が勘違いして、再度プリントアウトする可能性があります。
経理・総務・企画といった部署がワンフロアでまとまっている場合、他の部署の人物には見せたくない資料が混じってしまうおそれもあります。
こういったリスクを防ぐには、不要な印刷物はすぐにシュレッダーにかける、誰が印刷したか分からない印刷物は放置せずに確認するなど、無駄紙をそのままにしておかないことが大切です。
入れ替えリスク
コピー機に与えるダメージが蓄積していくと、やがて日常的な作業が思うようにできなくなります。
本来、コピー機は5年もつように設計されているのですが、あまりにハードな環境で稼働させていると、その分寿命も短くなっていきます。
寿命が短くなると、コピー機を想定よりも早めに入れ替えなければなりません。
リース契約を結んでいる場合に入れ替えをしようとすると、新しい機種をリースする際、古い機種のリース料金も組み込まれる形でランニングコストが計算されます。
それが結果的に安くなればまだよいのですが、例えば1~2年目といった短い期間で入れ替えしなければならない場合、ほとんどのケースで高くつきます。
コピー機が精密機械であることを理解して、大事に使い続けることをおすすめします。
コピー用紙のコストを裏紙で減らしたいなら
ここまでお伝えしてきた通り、裏紙はコピー用紙のコスト以外を減らすことはできず、むしろコピー機のダメージを増やし、それ以外のコストを大幅に増やすおそれがあります。
しかし、裏紙を使用する文化が社内に定着している中で、ある日突然「裏紙を使うのをやめる」ことにしてしまうと、オフィスによっては混乱を招くかもしれません。
もし、当面は裏紙を使い続ける・残っている分だけとりあえず使い切ることにした場合は、以下の点に気を付けて欲しいと思います。
用紙の状態に気を配る
裏紙に使用する用紙は、できるだけきれいな形をしたものを選びます。
例えば、紙の一部がカールしていたり、折り目がついていたりする用紙は、そこが内部に引っかかって紙詰まりを引き起こす可能性が高いです。
他には、閉じ穴が開いた用紙・写真や画像を印刷した用紙などが該当し、それぞれ形状や印字濃度が無使用の用紙と大きく異なるため、マシントラブルの原因になります。
ホチキスの針がついたままの用紙を使えば、ほぼ間違いなく紙詰まりを起こすでしょう。
このように、一口に裏紙といっても、その状態は様々です。
できるだけ、コピー機に負担がかからない・紙詰まりを起こしにくい裏紙を選びましょう。
用紙の種類に気を配る
コピー機において、裏紙として使える用紙は、原則として「普段使用しているコピー用紙のみ」と考えておきましょう。
普段使っているものと違う素材の用紙が混在していると、それが原因で紙詰まりを起こすこともあります。
また、使い終わったカレンダーを切り取って、裁断機でA4紙サイズにして裏紙にするのも、あまりおすすめできません。
いくら裁断機を使っていたとしても、完璧にA4サイズに切り分けられているとは限らず、社員の器用さによって個人差があります。
当然、サイズ感がおかしいまま印刷をかけてしまうと、コピー機が識別できなかったり、余った部分が引っかかってしまったりします。
エコに気を配ること・節約志向は大切ですが、本体に影響を及ぼすような仕事はしないにこしたことはありません。
できるだけ裏紙候補を作らない(印刷ミスをしない)
最後に、もっとも基本的かつ重要な方法として、できるだけ印刷ミスをせず、裏紙候補を作らないことをご紹介します。
人間が作業する以上、どうしてもミスはつきものですが、何度も同じような失敗をしないための方法を考えておかなければなりません。
パソコン画面から印刷指示を出す際は、必ずプレビュー画面をチェックする。
両面印刷なのか片面印刷なのか、事前に出したい資料のイメージを確認してから印刷する。
印刷設定・プロパティ画面の各項目が、それぞれ何を意味しているのか確認する。
これらのことを、印刷時に意識して行っているオフィスワーカーは、意外と少ないものです。
自分がこれから印刷しようとしているものは正しいのか、印刷方式はこれでよいのか、一つひとつ確認してから印刷するようにすれば、大幅に間違いは防げるでしょう。
この記事のまとめ
日本人が持つ節約志向は、海外でも評価されるほど素晴らしいものです。
しかし、度が過ぎればかえって無駄や損失を生んでしまいます。
コピー機で裏紙印刷をすることは、近視眼的には用紙の節約になりますが、その分コピー機の寿命を縮めています。
本当にコピー機・オフィスにとってよいことは何なのかを考えながら、日々の作業の精度を高めることが、オフィスワーカーに必要なスキルと言えるでしょう。